初心者データサイエンティストの備忘録

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【読書記録】NHK 100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』

「『幸福』」を掴むためにどうすれば良いか?」という問いに対して、過去の偉人はどのように考えたのかを知りたくて手に取りました。

本を読んだ背景

私は会社で出世できていないことを非常に苦痛に感じており、この苦痛をどう取り扱うべきなのかに悩んでいます。そんな折、TV番組「100分で名著」を通じて「ニコマコス倫理学」と出会い、興味を持ちました。

要約と感想

三つの生活類型

アリストテレスは人間の生活は三つに分類できると主張します。 快楽的生活、社会的生活、観想的生活です。

快楽的生活とは、読んで字の如く快楽を幸福とする生活です。社会的生活とは、社会において自分がなんらかの役割を担っていくことを幸福とする生活です。そして、観想的生活とは、知ることを幸福とする生活で、アリストテレスはこれを究極に幸福な生活としています。

この分類を出世欲が強い自分に当てはめてみました。

私が出世したい理由は、2つあります。一つは、金銭的に豊かになり良い思いをしたいということです。もう一つは、出世することで社会から認められたいという気持ちです。

前者については金銭を通じて快楽を求めているということで、快楽的生活に当てはまると考えています。後者についても一見、社会的生活のように見えますが、内実自分自身が認められて良い思いをしたいという快楽に基づいています。

したがって、出世を求めて生きることは、私の場合、快楽的生活に当てはまると考えています。

快楽的生活の欠点

快楽的生活は、人間を安定的・持続的な幸福に導かないとアリストテレスは主張します。その理由を本書では次のように述べています。

快楽そのものは悪いものではないのですが、快楽を軸に人生を組み立てようとすると、刹那的な快楽に振り回されることになってしまい、安定した人生の道筋が見失われてしまうからです。

以上のことから、出世欲が強く、かつそれを叶える能力があったとしても、出世を求める生活が快楽的生活である以上、安定的・持続的な幸福を得ることはできないと考えています。

私はどうあるべきか

私の人生を振り返って、どのような時に幸福を感じたかと言うと、何かを知ったり分かったりした時です。

例えば、私は受験生のとき、大学合格やその先にある大学生活にあまり興味を持てませんでした。一方で、数学と物理と漢文を勉強している間だけは幸福を感じることができました。 その性格は今でも変わっておらず、出世したいと願いつつも、ときどき出世がめちゃくちゃどうでもよくなる瞬間があります。

以上のことを踏まえると、私は人生をかけて、知ることに幸福を感じる観想的生活を送ることが向いているのではないかと思います。

最後に

今まで勉強は何かの手段であるべきと教育されてきました。そのことに私は密かに苦痛を感じてきました。 今回、ニコマコス倫理学と出会えたことで、私が感じていた苦痛を言語化でき、かつ知ることを中心に据えた生活を送ることが非難されるべきではないことを確認できました。 今後は出世欲を弱め、知識欲を強める生き方をしていきたいと思います。

おまけ

出世欲について考える過程で、承認欲求についても考え込んでしまいました。 その際気が付いたのですが、承認欲求を満たせるか満たせないかは、運によるということです。つまり、自分の努力だけで承認欲求を満たすことは結構難しいのではないかということに気が付きました。

その理由としては、承認する主体が自分ではないからです。どんなに努力しても、その努力を認めてくれる人が偶然周りにいなければ承認欲求を満たすことは難しいです。

そういった意味で承認欲求とは人任せの欲求であり、これに依存しすぎるとかなり苦しい生活が待っているのではないかと思われます。

一方で、承認欲求は基本的な欲求の一つのようにも感じられます。どんな人間でも人から認められるという経験がなければ、精神が病むのではないかと思われます。以上のことから、承認欲求とは取り扱い注意な欲求であるのではないかと思うに至りました。