本書を読んだ理由
会社でSDGs推進委員に入りました。具体的には、会社全体にSDGsについての教育を行ったり、SDGsに関する会社としてのアクションを企画したりなどの活動を行っています。
そんな中、私はどんな活動をすればSDGsにつながるのか何も思いつかないという状況に陥りました。そこで、既に行われている世界中のSDGsに関する活動を参考にするため、本書を手に取りました。 その結果、SDGsの活動を具体化していく方法について、有用な考え方を学ぶことができました。本記事では、その考え方について紹介したいと思います。
課題を深掘ることと、目標間のつながりを意識することが大事!
本書で得られた考え方、それは「課題を深掘ることと、目標間のつながりを意識することが大事!」です。
まず、課題を深堀ることについて例を挙げて説明します。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するための活動を検討しているとします。このとき、まず最初に取り組むべきは、「なぜ質の高い教育を受けられていない人がいるのだろう?」とか、「どんな人が質の高い教育を受けられていないのだろう?」と深堀して考えていくことです。その際に、5W1Hなどのフレームワークを使ったり、仮説を立ててデータから検証していくなどの思考法が有効だと思います。とにかく、アクションにつなげられるまで深堀していくことが必要です。
次に、目標間のつながりを意識することについて説明します。
SDGsには17個の目標があり、これらは互いに関連があります。そのため、ある目標を達成しようと行ったアクションが、別の目標の達成を阻害してしまうこともありえます。そのことをしっかり意識しておかないと、せっかく行ったアクションが逆効果になります。
一方、目標間のつながりを考え、ドミノ倒し的に複数の目標に働きかけられるアクションを考えることで、新たなアイデアにつながることもあります。 このような考え方をリンケージ思考というらしく、下記の本で詳しく解説されていました。
以上のことから、課題を深堀したアクション案が出たときに、それがSDGs全体に与える影響を検討することが重要です。
みんなの学校プロジェクト
ここでは、例として目標4「質の高い教育をみんなに」について深堀していきます。
まず最初に、どの地域の教育が進んでいないのか調べてみます。今回は、識字率の高さを教育が発展しているとみなします。
すると図1のようにアフリカに識字率が低い国が集まっていることがわかります。
そこで、なぜアフリカで教育が発展していないかを調べると、次のことがわかりました。(本書に書いてあることをそのまま書いています)
- 教員の知識・技術不足
- 学習環境が未整備
- 教育行政が弱い
さらに、これらの要素によって、親が教育に対して不信感を持っており、子どもを学校に通わせないという状態になっていました。これが、教育が遅れている理由の一つになっています。
このような状態を打破しようと始まったのが、「みんなの学校プロジェクト」です。このプロジェクトは、親や地域の人々を巻き込んで教育を良くしていくという活動を仕組み化しました。
これらの活動により、補習の実施などの教育機会の拡大や、教室・トイレを整備するなどの学習環境の改善につながったそうです。
ここまでの考え方を図2にまとめました。
さて、ここからは深堀をやめて他の目標との関連性について考えていきます。
先ほど挙げた進化する「みんなの学校」プロジェクト:アフリカ8ヵ国5万3000校に拡大、学校給食や手洗い啓発にも発展 | 2021年度 | トピックス | ニュース - JICAを見てみると、
各地でその地域ならではのニーズに基づいた地域住民たちの自発的な活動も生まれ、教育にとどまらず、栄養改善や衛生管理といった分野に活動はおよび、プロジェクトは大きな進化を遂げています。
2017年に地域の「みんな」に支えられるコミュニティ協働型の学校給食が始まりました。
との記載がありました。ここから目標4だけでなく、目標2「飢餓をゼロに」の解決に寄与していると考えられます。他にも、
みんなの学校の取り組みを始める際、しばしば障壁となるのが伝統的な慣習です。例えば、組織の代表者には年長者や男性を、という暗黙の掟があります。しかし、子どもの学習環境の改善に向け、委員会が現地の『みんな』を巻き込んで活動を実施するために必要なのは、男女問わず、やる気のある代表の力。代表を投票で選ぶ方法がなぜ必要なのか、実行の先に何が得られるのかといったことを地域住民たちに粘り強く説明し、議論しながら共通認識を持つようにしました。
からは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などの目標への寄与がうかがわれます。
このように、「みんなの学校プロジェクト」から始まった活動は、教育にとどまらず様々な目標に影響を与えています。一つのアクションによってドミノ倒し的に他の目標の達成に寄与していく良い例だと思いました。
要するにコンサルタントが普段やっていること
ここまで偉そうに書いてきましたが、ここまで書いてきた思考法は、コンサルタントたちが日常的にやっている思考法です。そういった意味で、コンサル企業がSDGsを推進することは、他の企業より優位な面もあるはずだと思いました。 また、SDGsの取り組みを元々非常に遠いものに感じていましたが、本書を読むことで親近感がわきました。本書に載っているような魅力的な取り組みをできるように、色々考えていきたいと思います。