内田さんの思考三部作の一つ、右脳思考を読みました。
本書の主張
私は外資系のコンサル会社で働いていますが、ロジカルシンキングの重要性を日々叩き込まれています。 それと同時に、直感に基づいて仕事をすることは避けるべきと教育されます。 本書はそのような風潮に異を唱えるものであり、ロジカルシンキングも重要だが、仕事に直感を大いに持ち込むべきと説いています(図1)。
なぜ、仕事に直感を持ち込むべきなのか?それは仕事をわくわくしながら進めるためであり、また、直感に基づいて仕事をする方が早いためと著者は言います。
なお、本書ではロジカルシンキングに基づいた思考法を左脳思考、直感に基づいた思考法を右脳思考と呼んでいます。
右脳思考と左脳思考の使いどころ
右脳思考と左脳思考の使いどころについて、本書では図2のように説明されています。
つまり、右脳で考えたことを左脳でチェックし、左脳で考えたことを右脳を使って人に伝えるという構造になっています。
「インプット→検討・分析」と「発散→収束」
世の中で広く言われる議論や思考における発散→収束の考え方は、本質的には右脳思考→左脳思考と同じだと思います。 具体的には、インプットの中で行われる右脳思考を使った仮説づくりは発散に対応し、検討・分析の中で行われる左脳思考を使った真の課題の特定・構造化は収束に対応しています(図3)。
なので、著者は突飛なことを言っているのではなく、広く言われている「発散→収束」の考え方をより上位概念に整理し直したように私は思いました。
「検討・分析→アウトプット」のあるあるとあるべき像
仕事をする上でよくあることは、緻密なロジックを考えてロジカルに説明し、お客さんも納得したはずなのにお客さんが動かないという状況です。このとき、私のような初心者コンサルタントは「なぜ正しいのに動いてくれないのか?」と思ってしまいます。 しかし、著者のような熟練のコンサルタントは右脳を使って、顧客が動かないその顧客特有の理由を見つけ出し、その解決に注力するそうです(図4)。
これは私にとっては目から鱗でした。人間は正しいから動くのではなく、腹落ちしないと動かないということは直感的には知っています。それにも関わらず、仕事においてはその考えを適用できていませんでした。しかし、実際は仕事においても顧客が腹落ちすることが重要であるということを改めて意識することができました。
実績がある経営者と右脳思考
本書には実績を出している経営者の右脳思考が紹介されています。 これを読み、私が過去に読んだ本を2冊思い出しました。
1冊目は、「入社1年目の教科書」です。
「入社1年目の教科書」は、元ライフネット生命保険取締役会長の岩瀬大輔さんによって書かれた本です。社会人としてどうすれば成長できるかということがテーマの本です。
「入社1年目の教科書」には、カラオケを通じて重要な取引先と連携できたというエピソードが出てきます。この話を通じて、仕事をロジカルに進めることだけでなく、人を動かす右脳的なセンスも必要だと感じることができました。
2冊目は、「俺が、つくる!」です。
「俺が、つくる!」は、岡野工業社長の岡野雅行さんによって書かれた本です。どんな哲学で町工場を経営し、実績を出してきたのかについて書かれています。
「俺が、つくる!」には、痛くない注射針を受注したときのことが描かれています。受注の際、岡野さんは部下から「絶対にできない」と受注を反対されたそうです。しかし、岡野さんは「誰もできないなら、俺がやる」と言って受注し、努力の結果痛くない注射針を作り上げてしまいます。 このとき、「なんとかすればできる」という直感が岡野さんにあったから、痛くない注射針は世に生まれました。これも岡野さんの優れた右脳思考があったゆえの実績だと思います。
まとめ
本書を読み、右脳思考と左脳思考の両方を駆使して仕事をすべき、ということを学びました。特に闇雲に右脳思考を使うのではなく、右脳思考を使うべき場面、左脳思考を使うべき場面があることを学べたことは大きな収穫です。
早速明日から右脳思考を活かし、わくわくしながら仕事に取り組んでいこうと思います。